ビニ本小史
ビニ本と呼ばれたものが、いつ登場したのか正確なところは知
らないが、1978〜79年頃ではないだろうか。
もちろん、いきなりビニ本が生まれたわけではなく、それ以前
にビニ本の前身のような似たようなスタイルのグラフ誌があっ
た。たとえば、ここにアトランダムに掲げたものは、ビニ本の
歴史の中では、ビニ本の前身か、あるいは初期のビニ本である。
ビニ本は、その名称が示すようにビニールで包装され、店頭で
は中身が見られないようにされて「大人のオモチャ店」や神田
神保町界隈に何軒もの店を出していたH賀書店や、後の白Y書
房の前身であるGリーン企画経営の「Sルフの店」などのアダ
ルトブック店で売られていた。その中から自動販売機で手軽に
買え、値段もやや安い自販機本というものが分化してくるが、
ビニ本の前身のグラフ誌や初期のビニ本の前には、さらに特価
本として発売されていたグラフ誌があったらしい。『ユーモア
グラフ』という微笑ましいタイトルで、聞くところによれば、
デパートの書籍売り場にも置いてあったらしい。何しろSとM
の文字をとった『サスペンス・マガジン』というSM雑誌が売
られていた時代であり、伝説的な『奇譚倶楽部』は、まだ出て 
いなかった。これより前になるともはやお宝に等しい『百万人
の性生活』になり、さらにその前になると、もうカストリ雑誌
の世界だろうか。その頃は、アダルトとかポルノなる語は使用
されておらず、すべてはエロ本だったという。                                              
私が持っていたビニ本の前身のグラフ誌でもっとも古いものは、
1975年発行の『聖少女』というタイトルだった。東京の国
分寺市駅前の偶然入った古書店で買ったと記憶している。少し
大人びているが美少女タイプのスクールガールのセーラー服姿
の写真が続き、これでもかと清純さを強調した後、チラリズム
のカットが続き、最後はパンティだけの姿になり、そして白い
パンティの上からだが、大股開きした股間のドアップという編
集だった。当時は、パンティの上からだとしても股間をアップ
した写真は珍しかったのではないだろうか。それだけに聖少女
のアップされた股間は衝撃的だった。もう一つ『犯された天使』
というスチュワーデスのレイプ物があったが、こちらは一つ一
つの写真がストーリーの表現になっており、フライトを終えた
スチュワーデスの「私」が、車で拉致され、ホテルへ連れ込ま
れてレイプされるという話で、犯される女性の側の心理が写真
に合わせて克明に活字にされているのが印象的だった。

ビニ本のモデルは当初は無名の女性が大半だったが、1980
年頃になると『白日夢』の愛染恭子や、裏ビデオで人気の高い
田口ゆかり、沖田真子などのビニ本も登場する。                                     
ビニ本に対して、裏本はいつ頃登場しはじめたのかは詳らかで
はないが、1980年前後だと思う。当時は、局部のヘアーは
ご法度であったが、あえてそれに挑戦した『すすり泣く初夜』
というビニ本が出され、すぐさま発禁になり話題になった(モ
デルの名前は当然ながら不明だが、他のビニ本では高原まゆみ
という名前になっていた、かなりの美形で、上品な顔から淫蕩
な顔までいろんな表情を持ち、放尿、浣腸排便シーンもOKの
女性だった)。
 

その後に、『性欲体験』と『局部責め』というタイトルのもの
が出されたが、これはさらに進み、全体の写真の数カットだが、
局部処理がされておらず、店頭販売していた歌舞伎町のアダル
ト書店には行列が出来たと聞いている(『性欲体験』のモデル
は銀座の高級クラブのホステスになり深夜のテレビ番組で紹介
されていたことを覚えている。)
その後、『法隆寺』や『金閣寺』といったタイトルの裏本が出
るようになり、そしてそれに刺激されたり、競合もあると思う
がビニ本にも一大変革が起きた。つまり、ビニ本も局部処理を
せずに、完全露出にしたのである。しかも、それを町中のアダ
ルト書店は堂々と店頭販売しだしたのだ。裏本との違いは、裏
本は局部をそのまま剥き出しにしているが、ビニ本の場合は、
ほぼ透明に近いようなパンティをモデルがはいていたというこ
とだろう。局部露出が解禁になったわけではないし、また現在
と違ってヘアーさえも厳禁という時代だったから、ビニ本のこ
の局部露出スタイルは小春日和的エピソードだったのかもしれ
ない。そしてこれがまたビニ本の最後でもあった。1980年
には40万円近くもしたビデオデッキが1982年頃には15
万円前後になり、ビデオデッキを購入する人が現われ、アダル
ト市場はBookからVideoへと移ろうとしていた。ビデ
オが主流になり、さらにビデオCDからDVDの時代になろう
としている現在、裏本は、洋服に対する和服のような感じで残
っているが、ビニ本の方は、過去の”文化遺産”になった感が
ある。

裏本に対してビニ本は局部が完全オープンではなかったという
だけのものではない。ビニ本には裏本にはない独特な卑猥さが
あったことは忘れてはならない。それはビニ本にはすべてでは
ないにせよ、写真にストーリー性のあるものが少なくなく、ま
た「犯された私」とか「レイプされた私」「SMの悦びに狂う
私」というように、女性の心理などを文字として写真に添え、
見る者の想像力を喚起するスタイルのものもあったことである。
そのことからいえば、裏本に対してビニ本は、写真とエロ小説
の中間のような要素があったといえるだろう。
またビニ本は、カメラワークに特徴があり、個々の写真もまた
変化に富んでいる。それと比べたなら裏本の決まりきったワン
パターン的な画像は、局部を見慣れてしまえば、退屈この上な
いほど凡庸なカットのものが多く、卑猥さにも欠けると言えよ
うか。

以前、1985年頃までのものをダンボール箱にして約30箱
分くらいはビニ本を持っていたろうか。当然、アパート(当時
はマンションではなくアパートが賃貸の一般だった)も、生活
空間以外に、これらのエロ本を置く書庫を兼ねた部屋が必要で
あり、現代風にいえばフリーターの身としては、一室多く借り
る負担は大きく、またかなり頻繁に引っ越したことも重なり、
次々に処分し、ほとんどなくしてしまった。今からすれば残念
な話だが、所詮、世の中とはこういうものだろう。                                 

ここでは、それらの中から、かろじて手元に残ったものの中か
ら適当にセレクトし、取り上げていきたいと思っている。現代
風の過激な画像を期待すると失望されるかもしれない。しかし、
昔、ビニ本を見たことのある方には懐かしいだろうし、ここは、
画像の過激さよりも、資料的な博物館的な陳列をメインにして
いる。                                       

 

  


 
 

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